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皆さんこんにちは。素材部の沓澤です。

今回はシルク糸の誕生、生産国、種類、などについて書いていきます。

高級品のイメージが高い素材だけに、実際の糸になるまでにさまざまな工程があります。

お取り扱いも含めて振り返りをします!

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シルクは偶然から生まれた繊維

シルクの発祥は古く、紀元前約2500年頃の中国で、お湯の中に繭(まゆ)を落としてしまい、それを箸で拾い上げようとしたときに箸に巻き付いてきたのが、絹糸の誕生と言われています。

当初は蚕から糸を製法する技術は中国国内で門外不出とされており、ヨーロッパに伝わったのが6世紀ごろで、日本には弥生時代に朝鮮半島から伝わり、明治時代に著しい発展を遂げ、世界へ輸出されていきました。

シルクの主な生産国

現在のシルクの生産国は、中国、インド、ブラジル、ウズベキスタン、タイ、日本などがありますがその大半が中国です。現在、中国の生産は家蚕農家が徐々に減りつつあり、隣国に少しずつ移しています。野蚕も取りに行く人が工場勤めに代わり少なくなり、生産量が減っています。

日本に至っては、1950年代は世界の約60%の生産があり、輸出金額も全体の35%ほどを占めていましたが、2012年には世界の生産量の0.2%まで減ってしまいました。日本も中国も近代化が進むにつれ、生産量が減っています。その理由は決まった時間に餌をあげ、そうじもしてあげなくてはならず、蚕を飼うのが大変だからです。今後の生産に少し希望が持てるのは日系人の多いブラジルです。最近のブラジルでの生産には機械化を取り入れ、定期的に時間が来たら餌をあげるようになっているそうです。まだまだ少ないようですが、今後に期待をしていきたいと思います。

シルクの種類

蚕を大別すると家蚕(かさん)と野蚕(やさん)に分かれます。

家蚕

野蚕

家蚕は文字通り、家で飼われている蚕で、桑の葉だけを食べますので、均一で長く綺麗なシルクが取れます。野蚕は野生の蚕のことで、自然に放し飼いにされ繭を作り、人がひとつづつ探して集めるために重労働になり、採取をする人が少なくなっています。野蚕には天蚕(てんさん)と柞蚕(さくさん)があり、クヌギ、コナラ、クリの葉なども食べますので、家蚕に比べ均一性が落ちます。

天蚕は高級シルクとして扱われ、家蚕と同じ繊維長があり長く、肌触りも良く光沢もありますが生産量はおおくありません。柞蚕はタッサーとも言い家蚕に次ぐシルク原料で、光沢はあるのですが風合いは少し硬いのが欠点です。100%でも使われますが、他の素材と撚糸したりもします。

シルクの特徴

1、他の素材を圧倒する繊維の長さ

蚕は2昼夜を掛けて細いシルク繊維を吐き出し繭玉を作ります。作られる繭玉は1本の長い繊維で出来ています。家蚕の繭で1200~1500mと長く、野蚕の繭でも500~600mもあり、他の原料に比べとてつもなく長い原料なのです。家蚕の繊維長が特に長いのは、家の中で飼われ、桑の葉だけを食べさせているので、太さに均一性があり、長い繊維になります。野蚕は野山で育つので、食べる葉も桑の葉だけではなく、クヌギ、コナラ、クリの葉なども食べます。やや均一性にかけ、繭玉の周りも硬くなり、採れる量がすくなくなります。羊毛、綿、麻は繊維が短いので紡いで糸にしますが、長い繊維を何本も重ねて糸にするので、毛羽がなく滑らかで風合いの良いのがシルクの特徴になります。

2、しなやかな繊維の太さ

家蚕の繭で約2.8デニール、野蚕の繭で6~7デニールですが、蚕が吐き出すシルク繊維は2重構造になっていて実際は2本吐き出し、1本の繊維は半分の太さになります。家蚕の繊維が細いのは、1で述べたように家のなかで飼われているからであり、野蚕の繊維が太いのは、自然環境の中で育つので、強い繊維が必要だからです。

3、蚕が作り出す奇跡の特徴

蚕がシルク繊維を吐き出すとき、体をくねらせてS字型に吐き出すので、繊維にうねりがあり、太さに違いのある繊維が出来ます。これらが特徴になり、弾力性、コシ、ハリのある繊維が出来るので、着物が型崩れしにくいことやネクタイの締め具合が良いのもシルク繊維の特徴になります。

4、隠れていた繊維

蚕が吐き出した繊維の断面は、2本のフェブロイン(シルク)と言う柔らかいたんぱく質で出来た繊維があり、その周りをセリシンと言う硬いたんぱく質が覆っています。このセリシンをアルカリ液で溶かして取り除き製錬という工程でフェブロイン(シルク)を取り出します。製錬を(練り上げ)をしないと、きれいなシルクにはならず、染色をすることもできないのです。

シルク糸の作り方

シルクは他の繊維原料と違い、他の原料は繊維長が短いので紡いで(紡績)糸にしますが、繊維長の長いシルクは、繊維を引き揃えて糸にする製糸、繊維をカットして紡績をしたり、繊維を薄い膜にしてつむぐなど、繊維を活かした方法で糸にします。糸にする方法は大きく分けて3つあります。

1、製糸

繭から繊維を引出し、一本の糸にする方法を製糸と言い、出来上がった糸を生糸と言います。この糸は長い繊維を引き揃えたものなので、糸の表面が滑らかなのが特徴です。

糸の太さは引き揃える本数でコントロールします。1本の繊維は約3デニールなので1/10の糸を作るには300本を引き揃えて作ります。

2、紡績

紡績糸は製糸の出来ない繭や、繭の表面の毛羽などを短くカットしたものを紡績にかけます。紡績をすることにより膨らみのある糸になります。

3、手つむぎ

繭の表面を引きはがして薄いシルクの膜(真綿)を作り、その真綿から繊維を引き出しながら撚りをかけて糸にしていきます。手で紡いだ糸は、表面に凹凸があり、表情のある糸が出来上がります。

シルク糸の種類

1、製糸で作られた糸(生糸)

生糸に使われる繭は家蚕、天蚕、柞蚕で、繭の種類によって特徴のある生糸になり、それぞれ家蚕糸、天蚕糸、柞蚕糸に分類されます。

生糸

2、紡績で作られた糸(絹紡糸)

生糸に出来ない繭の繊維をカットした物の中でも上質な繊維を紡績して糸にします。スパンシルクとも呼び、生糸と比べ膨らみがあるのが特徴です。もう一つ絹紡紬糸があり、絹紡糸とほぼ同じですが、使われる絹綿の品質が低くなるため、太く粗い糸になります。

絹紡糸(スパンシルク)

3、紬糸

真綿から手で紡いだ強い糸です。代表される物に結城紬があります。

結城紬

シルクの長所と短所

シルクは、蚕が作り出す自然の天然繊維素材です。その性能には長所と短所があります。

シルクの長所

1、光沢-シルクの繊維構造と、繊維の三角な断面がもたらすきれいな光沢があります。

2、発色性-繊維長が長いので毛羽立ちが少なく、内部からの反射により鮮明度の良い発色になります。

3、風合い-繊維が細く、長いので柔らかな風合いになり、繊維のうねりや弾力性などがコシのある風合いになります。

4、ドレープ性-きれいなドレープが出るのは、繊維の細さや弾力性のバランスが良いからです。

5、軽くて暖かい-繊維の中に多くの空気を含むので保温性が良く、空気を含むのとシルクの比重も軽いので、軽さが増します。

6、吸収性と発散性-綿と比較をすると、1.5倍近い吸収性があり、発散性も優れているので着心地も良くなります。

7、その他-静電気も起こりにくい、引っ張りに強い、燃えにくいなど良い点が多くあります。

シルクの短所

1、毛羽立ち-摩擦で毛羽立ちやすいので、編立時や着用での注意が必要です。

2、黄変-シルクは紫外線の吸収が良いので、少しずつ横変をして行き強度も低下していきます。吸収が良いので紫外線防止にはなります。

3、しわになりやすいので着用時に注意が必要です。

4、虫食い-シルクのタンパク質を虫が好むので、保管に注意をしてください。

5、堅牢度が悪い-シルクは染色性が悪く、黒は他の素材に比べ淡く、濃色は色落ちに注意が必要です。白は元々のシルク原料に色があり、白度が上がりません。

まとめ

綺麗な光沢、しなやかな風合い、肌触りの良さ、日本では一年中シルクの着物を着て過ごしていたように保温性、通気性も兼ね備えた最高な素材です。

ただし、すれて毛羽が立つ、水シミになりやすいなどの欠点もありますので、シルクの特徴、欠点を理解していただき使用をして頂ければ幸いです。

(今回の画像の一部を、株式会社長谷川商店様よりお借りしています。)

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沓澤 龍昇

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記事を書いた人

素材部の沓澤(クツザワ)です。出身は山形です。前職ではメンズセレクトショップで働いていました。皆さんと一緒にかっこいいニットをつくっていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

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